今回は、乳腺外来に来られる患者さんの、最も多い訴え「乳房痛」についてお話します。
当院では、乳腺外来を受診する患者さんのうち、約4割の方が「乳房痛」を主訴に受診されています。(図1)年齢別にみると、40歳未満の方に多く、40歳を過ぎると徐々に減ってきて閉経後と思われる55歳以上では非常に少なくなります。(図2)その原因のほとんどは生理的なもので、乳癌による痛みはほとんどありません。
卵巣から分泌されている女性ホルモンは、その濃度が周期的に変動しています。周期の前半は濃度が低く、排卵時から周期の後半に濃度が急上昇し、乳腺が発達します。そのために乳腺の体積が増え、血管が拡張してうっ血した浮腫状態になり、乳腺全体が張って硬くなります。これが「乳房痛」の原因です。排卵時や生理前の1週間ほど乳腺が張ってきて痛みを感じるのは病気ではないのです。脇の方から乳腺の外側にかけて、乳房下部、乳頭の奥の方に痛むことが多く、触ってみてもしこりを触れません。
多くの場合、生理がくると張り感や痛みは軽減し、いずれ治ります。
カフェインや脂肪をとりすぎるとエストロゲン分泌が増えるので、乳房痛のある方は喫煙、飲酒、カフェイン、脂肪の取りすぎには注意をしましょう。下着が合っていないために乳房痛が強くなる場合もあります。今一度、ご自分の下着が乳房に合っているかどうか、ご検討ください。
くり返しますが、多くの場合、生理がくると張り感や痛みは軽減し、いずれ治ります。
どうしても日常生活が制限されるほど痛んで困る場合は、バファリンやボルタレンゲルなどの鎮痛剤が有効な場合がありますのでお試しください。
「乳房痛」は乳がんで直接引き起こされる症状ではありません。乳がんはほとんどの場合、しこりを触れて発見されます。乳がんの早期発見のためには、乳癌検診を定期的に受けて、自己検診(梅干の種、石ころといった硬いしこりを探す)をしましょう。