妊娠には様々な条件が必要です。
良好な精子と卵子の出会い(受精)と発育が必須で、その後子宮内膜へ着床することで正常妊娠にいたります。
しかし、良好胚とされた卵を繰り返し移殖してもなかなか妊娠しなかったり、流産ばかりを繰り返したりする患者さんが存在します。
最近、そういった患者さんの多くに「慢性子宮内膜炎」と呼ばれる病態が存在することが分かってきました。
通常、正常の子宮内膜はひと月に一度「月経」となって剥がれ落ちます。毎月剥がれ落ちる表面のみの(内膜機能層)一時的な炎症ではそれほど問題ありませんが、「慢性子宮内膜炎」では子宮内膜の深部(内膜基底層)にまで炎症が及んでしまい自然に治ることはありません。
「慢性子宮内膜炎」の原因は細菌によるものや種々の要因による反応性過程とされ、無症状であることも多いとされています。持続的に内膜基底層で炎症が続いてしまうと良質の子宮内膜が出来にくい状態となり、結果として妊娠が持続しにくくなると考えられています。
数%から10%程度の女性が罹患しているとされていますが、特に反復良好胚移殖不成功例では半数以上に「慢性子宮内膜炎」が認められると報告されています。
検査では耳かき程度の子宮内膜組織を4か所ほど採取し「形質細胞」の存在から診断されます。診断されれば治療により8~9割が改善します。