乳児期・幼児期は、その人の一生の、心の在り方に影響を与える大切なことが、どっさり埋め込まれているときです。「“発達初期の宝もの”が箱詰めになって埋まっているとき」と表現しても、大げさではありません。
しかもその「宝もの」の箱のカギは、お母さん父さんをはじめとする、この時期に赤ちゃんのすぐそばで養育に当たる人たちに握らされているのです。
そこでこの「ハピサポ」のページで、こうした「発達初期の宝もの」を、発達心理学の知見を織り交ぜながら、ときどきご紹介していきたいと思います。
新生児期の原始的行動
生まれたばかりの赤ちゃんが、誰かに働きかけられたわけでもないのに、独特な行動をするのを皆さんは目撃したことが、きっとおありだと思います。つぎのようなものです。
①自発的吸啜(きゅうてつ)行動
目もつむり眠っている様子なのに、お口をすぼめて「きゅっきゅっきゅっきゅっ・・・・」と7~8回リズムよく、まるでおっぱいを吸っているように口を動かす行動。
②自発的微笑行動
同じような状態で、口の周りの筋肉を緩めて、ニヤッと5,6回笑顔を見せる行動。
③自発的抱きつき行動まるで何かをつかもうとするかのように手と足を前に出し何かつかもうとするような行動。
④自発的泣き行動
あたかもセミが鳴くようにリズミカルに単純に繰り返し泣き続ける行動
これらの行動は肺や心臓を司るのと同じ脳幹部に支配されていて、実は赤ちゃんの意図や意思とは無関係です。しかし、出生直後の2、3か月はこれらの行動が、作動するように人間はできています。このように赤ちゃんの意思とは関係ないにもかかわらず、どれもいかにも意味ありげに見える行動パターンになっていますから、ママたちは、「あ、おっぱい欲しいのかな?」と抱き上げておっぱいを含ませてみようかと思わされます。おっぱいを含ませば、赤ちゃんは、新生児の吸啜反射※という行動が起き、飲み始めたりします。あるいは、「ほらほら赤ちゃんが笑ってる。楽しい夢を見ているのかな?パパも見てごらん?」などとついつい引き寄せられ、赤ちゃんのそばで家族の楽しい会話が始まるのです。あるいはまた、「きっとさみしいのね、抱っこしてほしいのね」と思わされて、ベビーベッドからママの胸へと抱き上げられることもあるでしょう。
またこのようなことのためにも、発達初期の赤ちゃんと共に過ごす環境では、テレビ、スマホなどをはじめとする、電子機器の繰り出す明るすぎる画面や、刺激的な音が控えられ、赤ちゃんととっぷり出会えることが、とてもたいせつです。
※新生児は口に柔らかくとがったものが入るとそれを吸うという吸啜反射を起こします。